Persons

中筋雅也(なかすじ まさや)

お年寄りの多い西浅井の地で、お米作りに邁進する中筋さん。
無精髭に焼けた肌。笑う時に見せるくしゃとした顔が印象的だ。
現在、地元の若者を中心に『アグリンク』という有志の田んぼお世話集団を立ち上げ、活動をしている。現在メンバーは7人。みんな地元愛の強い若者たちだ。

 

主な活動は、過疎地域であればどこでも話題になっている「後継問題」の解消。
西浅井でも、年齢を重ね、田んぼの世話がしんどくなってきた米農家たちが、次々と水田を放置する状況が広がっていた。手入れのされなくなった水田は雑草が生え、土の質も低下してしまう。
この土地で作られるお米は甘みも強く、美味しいと県内外で評価されている。
決して楽ではないが、地元の自慢のお米を守っていくことがアグリンクの目的だ。

今は現状を維持するのが精一杯。まだまだ、やらないといけないことはいっぱいあると話してくれた。

中筋さん自身は、世話好きのリーダータイプというわけではないと話す。
もともとは一人でマイペースに物を作ったり、技を極める方が好きだったと話す中筋さんが、アグリンクを立ち上げ、自分のみならず他人の田んぼについても興味を持ち始めたきっかけに『お父さんの存在』がある。

中筋さんが30代に差し掛かった頃。お父さんが大病を患い、代々受け継いできた田んぼの世話がままならなくなってしまった。お父さんが作るお米は地元でも美味しいと言われ、田んぼができなくなったその年もたくさんのもち米の注文をもらった。結果できたお米は散々なものだった。しかし、地元の人たちは去年と変わらない価格で注文通り買ってくれた。

そのことに中筋さんは悔しくなった。
お米が美味しくなかった原因はなんだろう。どうしたら良かったのだろう。と、理由を探るべく、お米の勉強に取り掛かったことが、田んぼに積極的に入る理由となっていった。

『せめて、ちゃんとしたお米を作りたい』という気持ちが次第に『作り手として良いものを提供したい』というものに変わっていった。行き着いた先が有機栽培だった。
「このお米は牛糞だけで育てたんです」と、そう話せた年に中筋さんは自身が米農家であることを実感できたと話してくれた。

最後に今後の目標を聞くと「昔ながらの製法でお米を作りたい」、今興味があるのは『れんげ農法』だと教えてくれた。
れんげ農法とは苗を植える前にれんげ畑を作り、空気中の窒素を土壌に貯え、それを有機肥料として利用するものだ。れんげが肥料の役割をしてくれるため、化学肥料や農薬を使わずに安心して食べられるお米をつくることができる。 この農法は自然の力に頼る部分が大きく、まだまだ勉強中なのだという。

もう一つは「農業ってなんかダサい」というイメージを払拭したい。
『農コレ』という名前で作業服のファッションショーがしたいと夢を語ってくれた。

活動を始めてまだ1年だが、現在中筋さんの呼びかけで地元のみならず県外からも西浅井へ田んぼの世話をするために人が集まっている。
マイペースに、でも確実に進んでいる中筋さんの活動『アグリンク』。
西浅井だけではなく、農業で困っている人たちの問題解決の一旦を担う日もそう遠くないかもしれない。

 

書き人:辻 祥子

details

中筋雅也(なかすじ まさや)
No.
2
Name
中筋 雅也(なかすじ まさや)
Region
長浜市西浅井町
Occupation
米農家、挑戦者
Hobby
一人の世界に浸る、音楽