Persons
嶌津日出雄(しまづひでお)
「この間、観音さんに詳しい方がお越しになってな。こっちから見たお顔が綺麗ですねと言ってくれましたよ!」
笑顔で嬉しそうに話す高月観音堂世話方の嶌津日出雄さん。
世話方とは、村にある観音堂の掃除や祭事、観音さんの拝観者の対応をする人のこと。
高月観音堂では50〜70歳くらいの世話方さんが6人います。
「世話方になって今年で2年目になります。世話方になるまでは観音さんがいらっしゃるのは知っていたけど、どんな姿をしていらっしゃるか知らなかったです。高月観音堂へは年間400人くらいの拝観者がお越しになります。今年の観音まつりは1日で477人がお越しになり盛り上がりましたね。たくさんの方がお参りにきてくださったので嬉しかったです。」
観音の里ふるさとまつり、通称は観音まつり。
一年に一日だけ長浜市内北部地域を中心に、仏さまがいらっしゃる各お堂が一斉ご開帳する日。県外からたくさんの方がお越しになりました。
「地元高月に暮らしてきたのに、地元のことを知らないなと思いました。若い頃は新しいものに関心がいってしまいますからね。ですが、遠くからお越しの方に観音さんのことや高月のことを教えていただいて、良い場所だなと気がつくようになりました。」
若い時もオコナイ(湖北の小正月行事)で観音堂へ行く機会があるくらいで世話方になるまでは拝むことがほとんどなかったとのこと。
いろんな拝観者の方々と出会った嶌津さん。
「団体旅行の方でうちの観音さんを拝んでひどく喜んでくれた方がいらっしゃって。病気を抱えているものの、遠くに住まれているので一度はお参りしたかったみたいです。」
本当に信心深く観音さんと向き合う方に出会い、印象深かったとのこと。
「こういうことを心の拠り所というのかな、と思いました。世話方をしているだけで、自分もそういう人に貢献できることがあるということが嬉しく思いました。これも観音さんのおかげだと思います。」
世話方さんは観音さんと拝観者をつなぐ存在であり、観音さんはいろんな人を惹きつける存在。
観音さんを通した出会いが、嶌津さんにとって新しい気づきになっているようです。
世話方さんとして観音堂のお当番をされている嶌津さん。
そんな嶌津さんはとても器用です。今年の観音まつりで高月観音堂と渡岸寺観音堂境内の門前市で販売された“おうちでご開帳”の作り手さんです。
もともと釣りが好きで、竿の支えを作り始めたのが、ものづくりのきっかけ。
「最初は簡単なものを作るくらいでした。しかし、日曜大工をしていた友人から木材加工の機械を譲ってもらって、作るものの幅が広がっちゃいましたね。ゴミ箱からテレビ台とか。」
そんな中、村のお地蔵堂を作って欲しいというオーダーがあったとのこと。
「こんなお地蔵堂を作りましたよ、と観音さん好きの對馬さんに話したら「この形のフォトフレームを作ってください。」と言われて作ってしまいました。」
どういうミニお堂が喜ばれるか、どういう細工ならできるか、何度も作戦会議をしました。
完成作品をツイッターでアップしたところ、5000件近いインプレッションを更新。
観音まつりが終わった後も、オーダーメイドで製作しています。
「今は神棚にしたいという要望もあるので、少しアレンジして作っています。何よりも欲しいと言ってくれた方のことを思い出しながら、作るのが楽しいですね。」
おうちでご開帳を持ち帰ってくださった方と、離れていても繋がっていることが素敵ですね。
「これからも拝観者の方に観音さんについてもっと教えてほしいですし、いろんな方にうちの観音さんを知ってほしいと思います。」
観音さんと拝観者をつなぐ世話方さん。
一期一会かもしれないけれども、その出会いと会話を大切にする嶌津さん。
これからも観音さんと一緒ににっこりと拝観者をお迎えしてくださるでしょう。
書き人:對馬 佳菜子