久保 さゆり（くぼ さゆり）

彦根市の地域おこし協力隊の久保さゆりさん。
久保さんは25歳の時に地域おこし協力隊に任命され、主に移住促進のお仕事をされています。
移住促進とは、首都圏や大阪の人に向けて彦根市のPR活動をしたり、市内で移住を受け入れてくれる地域を見つけたりして繋がりを作りながら、移住したいという人のお手伝いする仕事です。

久保さん自身も、大阪から移住してきた一人です。移住者の気持ちがわかるからと仕事を任されることも多く、1人でどう動いていくのがいいか日々悩んでいます。

そもそも、移住という言葉には違和感を感じているそうです。

「移住促進って名前で事業をしているけれど、あんまり移住って言葉は使いたくなくて。わたしの中では心地のよい場所に住み替えるってイメージです。なんかいいなって場所に住み変えるだけで、大きい覚悟とかはいらないんじゃないかなと思います。」

久保さんは、移住という言葉に若干重たさを感じていて、もっと軽く、「いい感じのところに引っ越してきました」ってイメージで移住を伝えていきたいと話してくれました。それをどう言葉で伝えたらいいのか、日々考えているそうです。

そんな久保さんが初めて彦根市に来たのは大学受験の時でした。
当時大阪に住んでいた彼女は電車からの移り行く風景に驚きました。能登川あたりから景色は田んぼや緑が多くなります。初めて見る景色に、ここに住んで暮らしていけるのかなと心配になったそうですが、それも杞憂に終わりました。

「なんとなく琵琶湖のそばに暮らしていたのですが、その時に多分好きになっていたんですよね」
そう笑顔で話してくれた久保さん。いつの間にか当たり前の景色になっていた彦根は、彼女にとって居心地のよい場所になっていました。卒業後は一度大阪に就職しましたが、物足りなさを感じて彦根に戻ります。

もともと旅行が好きで、観光地ではないところを歩くのが趣味という久保さん。地方を旅して、そこで出会う地域の方々との触れ合いの楽しさに、いつかこういうところに住みたいと思っていました。大阪に就職してからも彦根には遊びに来ていて、その中でも新しい出会いは増えていきました。そしてその出会いが彦根に住み始めたきっかけになりました。

「生活を見て、面白いと思ってくれるような人に来て欲しいです。故郷ではないんだけど、「おかえり」って迎えられる、そういう場所を作りたいです。今はまだ難しいけど、それを目標に自分のためになるようなことをしていきたい」
と語ってくれました。

「彦根が好き。なんか好き。」
そう語る久保さんからは笑顔が溢れます。
彼女の思う彦根市には、特別ここがいいって言えないけれど、でも癖になる面白さがあるそうです。
「好きな人は好きで癖になる。そして、なんかいいなと思った人は根付くいていく。その感じが、滋賀県名物の鮒寿司みたいだなと思ってます」
そう言って笑う久保さんの感性はとても素敵で、わたしも聞いていて鮒寿司の言葉はしっくり来ました。こんなに素敵な表現をする彼女は、今解りやすく伝えるということに力を注いでいると教えてくれました。久保さん自身にも彦根市にも発信が一番の課題で、どういうふうに伝えられるんだろうって意識して考えているそう。好きな場所だから、誰かに好きって思ってもらえるように伝えたい。そう日々考え続ける彼女の言葉は誠実で、暖かさに溢れていました。

そんな久保さんの感性の豊かさってどこから来ているのでしょうか。
久保さんの生きがいを訪ねてみると、散歩との回答。それも、ただ歩くだけではなくて、知らないところの面白いものを探すことだそうです。観光地ではなくて、住宅地とか裏道とか。普通なら行かないような場所で、面白いというものを見つけては突っ込むのが好きって、すごく観察力に優れてます。

彦根には久保さんのツッコミどころが満載で、そこもお気に入りのひとつ。
最近、お城に行く途中にあるいろは松に面白いからくり時計を見つけたそうです。普通のからくり時計って13時とかちょうどの時間に、外にからくりが出てくるイメージですよね。でも、そこの時計は13時半に、ガラスの中で踊っているだけという、なんとも不思議なからくり時計みたいです。何度も通っていたのにからくり時計があることすら気がつかなかったので、久保さんの観察眼には驚かされました。
日常に溢れるものから少し変わったものを見つけることができる久保さんと、彦根の裏町散歩をしたら、とても楽しそうです。

 

自分の好きな場所だからこそ、色んな人に知って欲しい。そのために魅力を伝えていきたい。そして、住みたいと言ってくれる人が居たらサポートする。
そんな、久保さんの彦根愛と、人を愛する暖かさに包まれた素敵な時間でした。
いつか久保さんが見つけた「彦根の面白いとこ」が皆さんに届くことを夢に見つつ、今回の取材を終わりました。
皆さんも彦根の裏町散歩ぜひ体験してみてください。もしかしたら、久保さんにもお会いできるかも知れません。

 

書き人：ひな